仕事の安定とともに、サッカーも充実してきた。現在、月曜日から金曜日の平日は先に述べた早朝サッカーで能力を維持し、かつてそこで出会った多淵大樹監督率いるIntel Biloba Tokyoで週末は試合に臨む。最初の2年間ほどはあまりプレー出来ず脱退も考えたが、いまは堂々たる主力となっている。「カテゴリーを上げてやってみたいという願望はありますけど、全体練習がない分、その時間を仕事に使えるので、そういった面に関してもいまのチームでプレーを続けてるということはあります」。Intel Biloba Tokyoは純粋なアマチュアクラブ。サッカー給を支払い時間を拘束するセミプロのクラブとはそこが異なる。仕事を持っている社会人にとってはありがたい場なのだろう。
稲村は「不動産とサッカーはすごく似ている」という。不動産購入は人生最大の決断を求められるが、買うべき時には即決が必要なこともある。ひとつのミスが失点につながるディフェンスの瞬間、瞬間の決断も似たようなところがあるというのだ。サッカーが人生に反映され、人生がサッカーに反映される。社会人としての人生の側面が濃い分、そのつながりがより強いのかもしれない。「ドイツでやっていた頃と違う感覚で純粋にサッカーを楽しんでいる」と、稲村。プロとは異なる価値観、世界観の社会人フットボールを謳歌(おうか)している。
