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写真:ライセンス交付について語るクリアソン新宿の丸山代表。

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強靭な想いでJ3クラブライセンス交付にこぎつけたクリアソン新宿

ライセンス交付について語るクリアソン新宿の丸山代表。

Column後藤 勝

創立時から覚悟していたスタジアム問題

 クリアソン新宿のJ3クラブライセンス交付を受け、栗原憲二・三越伊勢丹執行役員伊勢丹新宿本店長は「私ども新宿本店は世界中のトレンドセッターが共感と憧れを抱く世界一、唯一無二の百貨店。これをヴィジョンに掲げまして挑戦をしつづけてまいりました。そしてクリアソン新宿の『世界一のフットボールクラブへ』という夢に共感いたしまして、この間、切磋琢磨し合い、そして励まし合ってまいりました」と述べた。

クリアソン新宿にJ3ライセンス交付 23区で初

 『Enrich the world.』なる文言をタグラインに定めるようなクラブはなかなか出てこない。伊勢丹新宿本店をパートナーとするクラブもなかなか出てこないだろう。お祝いのビデオメッセージでFC東京の石川直宏クラブコミュニケーターは「高いヴィジョン、そしてその想いの強さ、刺激になっています」と言った。

 このクラブは強靭な思想がどこまで行ってもブレない。東京都社会人リーグから出発している勤め人のクラブが世界一を目標にと言ったところで人は夢物語と思うかもしれないが、JFLの上位に進出してJ3クラブライセンスを交付され、Jリーグ加盟まであと一歩のところまでたどり着いた。はじめにまず強い想いがなければ物事は始まらない。2005年創立を起点とするクリアソンの軌跡はそれを証明している。

「『マルヤマバカだな。23区でサッカークラブをつくっても、Jリーグライセンスのとこでつまずくぞ。スタジアム問題、そんな簡単じゃないぞ』というのは、最初の頃からずっと言われつづけてきた課題でした」

 丸山和大代表取締役社長CEOはこう言った。東京のクラブであるかぎり、スタジアム問題は常について回る。そのことは、はなからわかっていた。2022年にJ3クラブライセンス不交付となった理由は、J3に加盟した際に東京都内にある味の素フィールド西が丘などの競技場をどのくらい使用出来るか東京都サッカー協会はじめ関係各所と調整したところ、公式試合開催に必要な試合数を満たせないことがわかったからだった。しかし今年は西が丘、国立競技場、江東区夢の島競技場、駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場、4つのスタジアムで開催出来る目処が立ったという。

 2020年に新宿区と包括連携協定を結んでホームタウンとの結びつきが強く財務も健全で、成績も2位のソニー仙台FCに勝点1差の4位と実力が向上し、平均観客動員数が目安となる努力目標の2,000人に近い1,890人になっていることも、特例としてJリーグが認めることを後押ししたのではないか。

昨年に続き国立競技場で試合を開催したクリアソン。(4月9日)

昨年に続き国立競技場で試合を開催したクリアソン。(4月9日)

西が丘等の都内会場を占有する責任

 もちろん、この交付が優遇措置であることは丸山代表もわかっている。地方に比べて不公平という声も聞こえてくるだろう。そうしたことがあるからか、ライセンス交付の背景についての説明では、次の一節を入れた。

「なかなかスタジアムの問題で突破出来なかった地方のクラブなど、いろいろな方々の想いも背負ったなかで、我々はこの23区というエリアでこういったチャレンジをさせていただけている。半分はそういった方々にどうやって貢献していくのかという責任を感じながら、しっかりとチャレンジをしていきたいなと思っております」

 前述の4つのスタジアムで開催試合の80パーセント分を確保。もし足りない場合は出来るだけ23区に近い関東近県のスタジアムを使用する場合もあるというが、クリアソンが早いもの勝ちでこれら4カ所を抑えた場合、女子や大学、育成など各カテゴリーに影響が及ぶ。もちろん、JFLや関東リーグ以下で活動する東京都のクラブがJ3に上がってきた場合、クリアソンが使っていて空きがないということにもなる。こうした影響についても、丸山代表は心苦しく感じているようではあった。

「我々が今回使わせていただく西が丘は高校サッカーの聖地でもあり、使いたいクラブさんがたくさんあるなかで、我々は今もJFLでもたくさん使わせていただいてるという状況になっています。我々としてはいち早くクラブとして力をつけて、もっと違う箱で活躍出来るようなクラブになっていくことを至上命題として持っていると認識しています」

 今回の都内4会場開催策はあくまでも経過措置と認識するなら、最終的にはJ1に昇格し、FIFAクラブワールドカップに到達するまでにホームスタジアムを確保する必要がある。もしそこまで目標を達成出来たなら、やはり想いは岩をも貫くのだと、我々もあらためて認識することだろう。

 スタジアムを持たないクラブがJ3クラブライセンスを交付されるという本来ならありえないことを起こしたクリアソン新宿であれば、それを成し遂げかねない気もするが、はたしてどうなるか。とはいえ、そこを考えるにはまだ早い。まずはこのクラブがJFLで2位に入り、J3への挑戦権を得られるかどうかを見届けたい。
(後藤勝)

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