COLUMN
垣見修平が都リーグと医療そして育成の現場で得たもの - #04
|後藤勝
#04
垣見は念願叶ってJクラブのスタッフに転職し、トップチームの仕事をしたいという目標を持ちつつも、現在は発見が多い育成の面白さを強く実感している。プロとは異なり、学校を含めていろいろなことがある日常の中でサッカーに打ち込む、そういう選手たちの才能をどれだけ伸ばしていけるか、その手伝いをどれだけ出来るか。この面白さを伝えるのは難しいと感じているという。
「学生とか、やっぱりみんな(やりたいのは)『トップチーム』って言うじゃないですか。ぼくも学生時代はそう思っていましたし。でも、そこじゃない面白さが間違いなくある。選手が日々積み上げてきたものが一気に開花する場面に、本当に稀に出くわす時があって、ぞわっとします」
変化が顕著だったという意味で驚かされたのは現2年生(2006年生まれ)の浅田琉偉。それまでは柔らかい印象の少年だったが、スペイン遠征を機に、一気に闘う男になったという。言葉ではなく、実体験としてなにかに触れてそれを感じ取った瞬間に“化ける”、そんな姿を垣見は面白いと感じているようだ。
2023シーズンからトップチームに加入した熊田直紀も急激な変化を示したひとりだ。U-19日本代表に選出されながらコンディション不良のため辞退する羽目に陥った2022年、それまで無口だったのに、どうすればよいコンディショニングが出来るのかを熱心に訊ねてきた。
変化とは少しちがうが、想定に反した頑健さでトレーナーとしての垣見を驚かせたのはFC東京U-18在籍中にトップチームに昇格した佐藤龍之介。ふつう、彼のように技術に長けた選手はカテゴリーを上げる過程でけがをしてしまいがちだが、タフな佐藤はいっさいけがをせず、ファンタジスタに対する先入観を覆した。
想定外の発見があるユース世代の仕事が、U-18のトレーナーである垣見を魅了してやまないようだ。