小林、藤本ら個の力で国立勝利さらに広がる可能性【岩手】

2025年6月16日

写真：終了間際に決勝点を蹴り込む岩手のFW藤本。

MATCH REPORT後藤勝

＜JFL：クリアソン新宿 0－1 いわてグルージャ＞

終盤まで0－0で進み、スコアレスドローかと思われた国立競技場開催のJFL公式戦はいわてグルージャ盛岡に軍配が上がった。

後半47分、右スローインから始まった岩手の攻撃が膠着しかけたところで、元日本代表のMF小林祐希がタッチライン際を巧みに前進。身を捻ったパスがボックス際のMF藤島に通り、そこからさらに運んでマイナスのパスを送ると中で待っていたのはFW藤本。ワンタッチで枠内に蹴り込んだ。これがこの日の先制点にして決勝点だった。

前半2分にあった藤本のシュートに始まり、得点になりそうなシーンは複数回あった。それらが決まらず、最後の最後でクリアソン新宿のゴールをこじ開けることが出来たのはなぜなのか。星川監督は次のように答えた。

「もう1個、内側がなかなか取れなかった。コンビネーションが合わなかったりして、どうしてもボックス周辺の攻撃が多く、最後のシーン（得点シーン）みたいに深い位置までパスが行かなかった。その辺りがちょっと課題かなと。ボックスの外からのシュートが多く、内部に進入するというところはなかなか。小林が前向きでターン出来るチャンスが増えればそういったシーンは増えてくる、そのレシーブ先が今日に関してはちょっとなかった。そこが次の課題かなと思う」

ボールを握るところまでは出来ている。ただそこから先をこじ開けていくには小林らの個の力が必要で、パスを受けて進入していく選手たちの勇気も必要。ここを克服すればゴールも勝利もより増えていくということなのだろう。

この日は大卒のFW岡崎のJFLデビュー戦でもあった。岡崎はトレーナーとして岩手に加入したが、選手としても行けそうだという提携先の推薦があり、いち選手として3月からチームに加わったという変わり種。練習試合ではヴァンラーレ八戸の石﨑信弘監督、ベガルタ仙台の森山佳郎監督からも褒められたという評価の高さも実戦投入を後押しした。この日は不慣れな右のワイドのポジションだったが、星川監督は「ビルドアップの逃げ先に彼は成れる」と高く評価。足をつって途中で退いたものの「もう少し見たかった」と指揮官に言わしめ、可能性を感じさせた。

【写真】トレーナーから選手登録された岡﨑。

小林によれば「若手が甘っちょろい。甘いやつにはガツンと言って、それで紅白戦がまたキリッとした」ことがあったという。そうした刺激を機に、若手も遠慮せず小林らにものを言えるようになってきたというのだ。この日は小林、藤本といった両ベテランの力で勝つ格好になったが、若い選手たちの伸びしろを考えれば、岩手はまだまだ成長出来る。上向きのベクトルを感じられる、国立の午後だった。
（後藤勝）

小林祐希の話
「今日くらいサッカーにかけてる選手たちが相手にいると、面白い試合になるのは当然。みんな人生をかけてサッカーやっているので。今日はすごく良い舞台だったし、楽しかったし、クリアソン側の関係者の人たちに感謝している。（目標については）自分はもう目標を立てられる年齢でもないし、一日一日を一生懸命やるだけ。自分が今ここにいる現状を受け止めなくてはいけないし、それをうまく消化しながら参加している」

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