東京サッカー [TOKYO FOOTBALL]

写真:現在、FC東京U-18のトレーナーを務める垣見修平氏。

 

COLUMN

垣見修平が都リーグと医療そして育成の現場で得たもの - #03

|後藤勝

#03

 垣見がFC東京U-15深川に入って最初に気がついたのは、選手たちに「思ったより元気がない」ということだった。

「小学校まではそれぞれのチーム、地域の王様だった子たちが少しずつ現実を知ると、好きでやっているはずのサッカーがちょっと好きじゃないように見えてくる。そこを、こっちがトレーナーというよりは、一番選手のそばにいる立場として、空き時間を見つけて話をしたり。みんな、すごいエネルギーを持ってずっとやり続けていくんだろうなとばかり思っていたものが、思ったよりみんな大変そうだった。それが意外でした」

 学校で体育の授業をしてから来る。あるいは2時間くらいかけて通ってくる。そういう回復が追いついてない子たちの疲労を考慮するとどこが妥協点なのかというところを見つけることは難しいと思ったという。コーチングスタッフとメディカルスタッフがいたとして、トレーナーは心身ともに選手のケアを受け持つ職務。保健の先生ではないが、相談役を買って出るのが仕事ということでよいのではないかと考えるに至った。

写真:選手のコンディションチェックを行う垣見トレーナー。

写真:選手のコンディションチェックを行う垣見トレーナー。

「選手の愚痴を聞いたり。学校の成績もそうですし、人間関係で言えば彼女のこともそうですし、家族のこともそうですし、そういう雑談ですね。日々向き合っている感じです」

 直接フィジカルの管理に関する話をいきなりするのではなく世間話に徹する。そのなかで食べ物の話になった時に初めて栄養の知識について触れたり、入浴や睡眠の大切さに触れ、悩みが出てきた時に、引き出しから持てるものを引っ張り出して選手に提供していく。頭ごなしに知識を授けるよりも、そういう状態のほうが選手に浸透しやすいと感じている。

「サッカーの経験に基づく話は、絶対に自分からは出さないようにしています。話をするのはたとえば、アカデミーを卒業したOBがたとえばその大学の社会人チームで試合に出ている時の話をした時ですね。そこで初めて自分が社会人リーグで戦っていた時のことを話します。大学を卒業して社会人になった時に、どうすればコンディションを維持出来るか、とか。1週間のうちグラウンドでサッカーが出来る時間が少なくても週末にはパッと試合をしなきゃいけない、ああいう社会人特有の環境がありますよね。それは中学や高校の恵まれた環境にいると気づかないことですから」

 中学生や高校生の選手と接する時に、社会人リーグの経験が活きてくる。エリース東京FCやクリアソン新宿、CERVEZA FC東京、東京海上FCなど、仕事とサッカーの両方を頑張る社会人選手たちの姿勢が大好きだという垣見は、そうした人間性を備えるようになってほしいという想いをこめて日々若者たちに接しているのだ。

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