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シリーズ展望「東京社会人サッカーの未来」Vol.03

社会人の「矜持」。Intel Biloba Tokyoの挑戦 - 06(最終回)

|後藤勝(ライター)|コラム一覧

Intel Biloba Tokyo

これからのIntel Biloba Tokyo

 2021シーズン最終戦を3-3で引き分け、Intel Biloba Tokyo初の東京都社会人サッカーリーグ1部への挑戦は終わった。勝点16での18チーム中13位が確定。今季は「降格なし」と決まったが、もし降格ありの規定だったとしても、ギリギリではあるが残留出来る成績だった。

 企業や大学といった母体を持たず、Jリーグを目指すと宣言するわけでもない。そうした同好の士が集う社会人クラブチームであっても1部で戦えると示すには十分な結果だが、N.戦後に多淵代表が語っていたように、ピッチ内の要素については基礎技術のわずかな差や相手に対応されたときの修正力といった点で課題を残した。これらの克服、向上ももちろん重要だが、気になるのは今後Intel Biloba Tokyoがどこに進むかだ。

 多淵代表は「基本的にはスタンスを変えたくはない」と言う。

「監督からのトップダウンのサッカーをしない等のコンセプトは、ぼくが代表のうちは変わらないと思います。Jを目指すこともないでしょうし、プロ契約の選手を所属させることもありません。選手たちの年会費によって成り立つこのアマチュア体制自体は続けたい」

 変わっていくとすると、それはグラウンド内で生じる自然な要求に基づくものになりそうだ。

「新陳代謝が起こって新しい選手が入ってくると思います。今後、1部のレベルが上がっていくと、それに準じた能力を持つ選手、長くチームを牽引出来るような核となる選手が必要になっていく。もしその年の登録メンバーが『練習を週一回やれるようになりませんか』と言えば(週末の公式戦以外とは別に)始めるでしょうし。今シーズンも全体の幸福度が高くなるようにと考えて土曜日の練習を入れるようにしようかと話し合いましたが、そのように僕が決めるというよりは、メンバー間の合意で決まっていくのかなと」

 現在所属している選手はIntel Biloba Tokyoを自分の場と考えている者ばかり。だからこそ、出来るだけ全員の意見を聞きながら落としどころを見つけていく方針は変わらないという。それが社会人が余暇を楽しむ集団として、守りたい一線なのだろう。

 ただこのクラブでプレーする価値を見出し、チームとしてのモチベーションを高めていくためには、やはり一定の目標設定は必要だ。その点に関しては、1部の環境が刺激になっている。多淵代表はこう続けた。

「1部に上がったことでいままでに出来なかった経験をさせてもらっています。様々なクラブとバチバチとぶつかり合う公式戦が出来、2部にはなかった国体の選手派遣で練習会にウチの選手も派遣させてもらい、全国社会人大会や関東社会人大会に出る可能性もある。東京カップ(天皇杯予選)も含めていろいろな経験を積んでいきたいと個人的には思います」

 そのように様々な可能性が広がっていることは間違いない。とはいえ、今後東京1部から関東リーグで戦うことを目標設定にすると、運営体制の拡充を迫られるだろう。そうしたすぐには対処しにくい大きな変化を伴う遠くの目標よりは、しばらくは1部での活動を軸に身近な目標を設定していくことになりそうだ。

 母体を持たず、ボトムアップでやりたい人間が集まってきて、自分たちの力でどこまで行けるのだろうかと壁に当たっていく、そうした挑戦をするおもしろさがIntel Biloba Tokyoにはある。

「ウチは所属する選手の年代がバラバラですけど、みんな仲がいい。そうやって人間関係が出来てくるとじゃあ5年後シニアになってからもやりたいねと、そういうことになってくる。最近はマスターズとか35歳以上の大会も出来、それが全国までつながったり、生涯スポーツとしてサッカーを続けられる環境もあります。その時々でいろいろな選択をしつつ、トップチームを維持をしつつということが出来たらいまは理想かなと思っています」

 社会人としてサッカーとともに生きる暮らし。その日々を描いていくIntel Biloba Tokyoの挑戦は始まったばかりだ。

(了)

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