COLUMN
シリーズ展望「東京社会人サッカーの未来」Vol.01
時代の荒波に揉まれ、変革の時を迎えた50周年のエリース(下)
|後藤勝(ライター)
プロとアマぞれぞれで国内リーグの整備を
小宮代表の考えを詳述すると、以下のようになる。
1993年に10クラブで創設されたJリーグはカテゴリーをJ1からJ3の3部に増やし、J3で活動するJ1クラブのセカンドチームを含め、現在は58チームがひしめきあっている。誰もがこの枠をめざしてJリーガーになりたがるが、成功するのは一握り。将来の人生設計を整える期間として大事な18歳から26歳の時期を、先の見えないプロ選手活動で失っていいものなのだろうか。26歳というのは、新人の場合は加入後3年間は成長を見守る暗黙の了解があるなかで、プロ入団後3年間の出場時間累積が一定の基準に満たず、解雇される選手が最も多い年代だが、彼らのその後をフォローしきれていない現状があるのではないか。
プロ野球の場合は加盟クラブが12球団に絞られ、1軍の登録選手数を仮に30名で揃えた場合、360名ほどの一流アスリートのみが活躍し、質の高い試合展開にファンが大きな声援を送り、スポンサーがサポートをする構図になっている。仕組みとして頂点を鋭くするNPBに対し、Jリーグは底辺を拡げていく構図。58チームで3,000名を超える登録選手数を数えるが、日本代表と欧州トップの外国籍選手が各チームに数人ずついた草創期のJリーグに比べると質の高い戦力が分散し、いい試合を見る機会が減少しているように個人的には感じる。Jリーグでも、英国のプレミアリーグのようなカテゴリーの新設を検討していくことも必要なのではないか。
サッカー界には、Jリーグのほかにアマチュアチームの山がある。JFLを明確にこのピラミッドの頂点として位置づけ、地域リーグと都道府県リーグをJFAはさらに強化するべき。JFLについてはアマチュア最高峰のリーグとして、日本を東西ブロックに分割した開催を望みたい。移動の負担が少なくなり、チャンピオンシップを最後に実施すると大会としてのおもしろさが増す。
日本の1種登録選手は2019年の数字で139,480人。そのうち日本代表選手、海外クラブ在籍選手、J1からJ3に所属する選手をすべて合わせても5,000人にも満たない。第二の本田、香川、岡崎、長友を育成するのも大事だが、サッカー人口の多くを占めるアマチュアの大会の価値を上げることが、最終的にはサッカーの隆盛につながるのではないか。
1969年に立教大学が天皇杯決勝で東洋工業に苦杯をなめ準優勝で敗退して以後の50年間、大学チームの決勝戦出場はならなかった。プロが待つ再来年1月の決勝に向けて1年以上前の12月からアマチュア参加の予選が始まる日程には無理がある。天皇杯予選のために「コロナ禍」「熱中症」などのリスクを背負いながら本番のリーグ戦を真夏に消化していては本末転倒。Jリーグと社会人サッカーを包括した改革を求めていきたい。