東京サッカー [TOKYO FOOTBALL]

COLUMN

シリーズ展望「東京社会人サッカーの未来」Vol.01

時代の荒波に揉まれ、変革の時を迎えた50周年のエリース(上)

|後藤勝(ライター)

エリース東京FC

 今年2月、エリースフットボールクラブがJリーグ参入をめざすという一部報道がサッカー界を賑わせた。トップチームに現在東京都リーグ1部のエリース東京FCを戴くこのクラブが徹底したアマチュア志向であることはよく知られている。風向きが変わってきたのはなぜなのか。エリースの各年代7チームを束ねる小宮敏裕代表に訊ねると、背景にはサッカー界の地殻変動が関わっていることがわかった。

2020年、エリースにとっての転機

 大学を卒業したサッカー経験者が就職する際、どこに所属したらいいか相談するとまずエリースを勧められた──という話を聞いたことがある。このサッカー界での立ち位置を、エリースフットボールクラブは最初の20年間で築き上げた。日本そのものに勢いがあった時代。そしてまだJリーグが存在しなかった時代。尖ったセンスを持つ立教高校の卒業生が「楽しくて、強くて、カッコいい」草サッカーのチームをつくると、そこに大学トップレベルの若者たちが集まってきた。企業チームに所属するのでなければ、クラブチームのエリースへ。そういう流れが出来た。

 Jリーグが創設されたあともエリースの勢いは止まらず、1995年の初参入を機に関東リーグに定着し、トップチーム以外に各年代のチームをつくり組織を大きく成長させてきた。ところが関東リーグ2部から降格して東京都リーグ1部で迎えた2019年に危機感は強まった。2018年にエリースFC東京からエリース東京に改めたばかりのトップチームはさらにエリース東京FCと改名してこのシーズンに臨み、リーグ優勝を果たして関東社会人サッカー大会ベスト4まで進んだが準決勝で敗退。関東リーグ復帰を果たせなかったのだ。

 Jリーグ参入へ──と報じられたのはこのあと、2020年に創立50周年を迎えたタイミングだった。佐川急便東京SCが大阪と合併して滋賀へと移転後消滅、横河武蔵野FCが東京武蔵野シティFCへと組織を変更するもJリーグ参入を断念と、東京都に於ける社会人チームをめぐる状況が変わっていくなか、アマチュアクラブチームの象徴とでも言うべきエリースまでもが、関東から上をめざすどころか降格した都リーグからの再昇格を果たせない。何かを変えなければいけない時機が訪れたのか。


群雄割拠の関東リーグ1部

 今シーズンのエリース東京FCは、昨年一年間水戸ホーリーホックに所属していた近藤慎吾が復帰し、昨年まで福島ユナイテッドFCでプレーしていた小牟田洋佑が加入した。身長173cmながらファビオ カンナバーロのように屈強なディフェンダーの近藤、身長187cmの巨塔であるフォワードの小牟田と、これだけでも異色だが、シーズン中には昨年かぎりでの現役引退を表明し半年間のブランクがあった前FC岐阜キャプテンの阿部正紀、そして横浜F・マリノスアカデミーの出身で複数のJクラブを渡り歩いた保崎淳が、下村東美臨時コーチのツテで入ってきた。体制を強化しているといえばそう言っても差し支えない状況に映る。身長が180cmに満たない近藤と阿部がセンターバックでコンビを組めばこれは最近一部で流行っている背の高い選手を置かない機動力重視のディフェンスラインともなりうるが、どうあれチームを強くしていこうという意思はうかがえる。

 「いま関東リーグの1部2部を合わせて全部で20チーム。このなかで関東リーグ1部に上がるのは難しい。みなJFL狙いで錚々たるメンバー」と、小宮代表は苦い表情を浮かべる。

 昨年はJFLで4位につけていた武蔵野は、新型コロナウイルス禍に見舞われJ参入を諦めた今年、東京勢として孤軍奮闘しながら16チーム中11位に低迷(※11月15日現在)。JFL直下の関東リーグ1部ではTOKYO UNITED FC、日立ビルシステム、東京23FC、Criacao Shinjukuの4チームがひしめき、JFLを前に足踏みしている。企業チームの日立ビルシステムはともかく、残る3チームは上昇志向。JFLへ、やがてはJへと考える彼らが留まっている関東1部へと分け入るのは、小宮代表が言うように困難な仕事となりつつある。

 拡張をつづけるJリーグはカテゴリーを3部にまで増やし、なお加盟クラブを受け容れる構えだ。そうなるとJFLのクラブ、JFLをめざす各地域リーグのクラブにもプロ、セミプロ、プロ志望の選手が溢れることになる。都リーグにもいわゆる“元J”がプレーの場所を求めるケースは以前からあったが、最近は激化している。

 敷居の高いJリーグのレギュレーションに合わせて各クラブがこぞって体制を強化し、プロ級の選手を揃えようとする、その競争の渦中にあっては、エリースもこれまでのままでは伍していけない。エリースの変化は、サッカー界そのものの変化を如実にあらわすものだったのだ。

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