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写真:武蔵野に敗れ天皇杯への道が断たれた南葛。

天皇杯予選ニュース

南葛「時間のズレ」を揃えきれず 長いスパンで育成を図るがゆえの敗戦

写真:武蔵野に敗れ天皇杯への道が断たれた南葛。

MATCH REPORT後藤 勝

<社会人代表決定戦:横河武蔵野 2-0 南葛SC>

 関東リーグ1部開幕戦から中3日、DF田中とMF下平以外の9人を入れ替えて臨んだ南葛SCが、JFL横河武蔵野FCの軍門に降った。しかし風間監督はいつものスマイル。ピッチコンディションに戸惑っていたのでは──と水を向けると「天然芝に慣れていなかったね。しかも水を撒いていないから、めちゃめちゃ慣れてない。これもひとつ、いい勉強になったと思う。人工芝じゃなくて、水撒いてない芝生でも練習しといたらいいなっていうくらい」と、こともなげに笑った。

 中長期での選手育成を見据えての取り組みだった。この日も個々が身体をうまく使い武蔵野のプレッシャーをかいくぐることは出来たが、風間監督は「今日はみんな下手だったよ」。いまトレーニングを行っているのは「ボールを奪われないために動かすんじゃない、ボールをゴールに入れるために動かすんだ」ということ。しかしこの日のメンバーでもプレーの仕方が前者と後者とに分かれてしまう。ここの質を揃えていくことが大命題で、その点では未熟な状態があらわれた結果の、無得点での敗戦だった。

「体験をしていってもらうっていうのは、前から言っているけど一番大事。今日も何人かこの中に入れた。この5試合で多分26人くらい使っていると思うので、そういう意味ではすごくいいことになっていると思う。今日も非常に有意義な試合だった」と、成長に必要な実戦経験を風間監督は喜んでいた。

 関東リーグ開幕戦で先発しながら前半27分で退いたエリキを、この日の後半開始から起用。その期待に応え、劣勢の戦局をやや押し戻すようなプレーぶりだった。これも「みんな可能性を感じてるし、俺は諦めないから、誰も諦めないから」という風間監督の配慮だった。ジョイフル本田つくばFC戦(開幕戦)よりもエリキが活きるポジションはどこかを考え、前回より長い45分間を与えた。「彼は、例えばスピードがあるから。諦めないとどこかで選手は変わるんでね。そういう意味ではすごく期待している」

 敗戦よりも気になるのは「時間が合っていない」という根本の質だ。

「自分たちが受ける場所とかでも時間がズレているので、そこを合わせていかなきゃいけない」

 ボール保持者に対して寄っていったり、スペースに動いたりという速さが揃っていない。そのバラつきが合うと、ゴールに向けてボールを動かせるようになっていく。AチームとBチームに分けると時間の感覚が異なるチームがふたつ出来てしまうため、どうにかして40人の“時間”を揃えていきたい。これが現在直面している大きなテーマであるようだ。

【ハイライト】横河武蔵野FC 2-0 南葛SC

 風間監督によれば、ベンチ入りを果たしていないなかにもスピードアップを実現している選手はいるという。しかし現行のルールではベンチ入り人数がコロナ禍以前の7のまま。そこで、試合内容に即して経験を積ませたい選手を出していきにくいという不満がある。交代人数が3から5になったことを受けて2024シーズンのJリーグYBCルヴァンカップではベンチ入りの人数を7から9に増やしたが、変化があったのはその大会くらい。風間監督は「最初から想定したものでしか使えない」と、苦慮していた。

 40人体制、時間と距離を揃えるという思想。他にはない取り組みを掲げる風間南葛そのものが、選手育成を促しフットボールの質的向上を果たすために必要なものは何かを考えさせる問題提起になっている。そんな感触すら漂う敗戦だった。

原点回帰の武蔵野、“孝行息子”阿部拓馬の帰還で貴重な勝利

大会日程・トーナメント表
第29回東京都サッカートーナメント

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