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写真:選手がビジネスパーソンでもあるクリアソン新宿

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社会人発のクラブとして貫く独自性 クリアソン新宿

選手がビジネスパーソンでもあるクリアソン新宿。

Column後藤 勝

半分スーツ、半分ユニフォームを着た選手

 J3クラブライセンス交付についての記者会見の席上、丸山和大代表取締役社長CEOが「クリアソン新宿が目指すこと」を説明するとき、図の中心には半分スーツ、半分ユニフォームを着た選手のイラストが配置されていた。

「我々のクラブはサッカーをやるだけではなく、選手たち自身が地域活動やビジネス活動を日中おこなって、サッカーも両立するような形で頑張ってくれています。そういうメンバーが週末は国立競技場を始めとしたスタジアムで、街の皆様に熱気をお届けし、平日は企業様を訪問してスポーツを通じた人材の採用の事業をご一緒させていただいたり、 スポーツを使った企業研修やイベントでご一緒させていただく。あるいは地域の商店街や町会の皆様と一緒に地域イベントを活性化させていただくような形で、我々が微力ながらスポーツを使ったハブとなって、地域の皆様の持っている魅力で我々をどんどん磨いていただきながら、我々自身もスポーツの価値で町を元気にしていくという相乗効果で地域や社会が豊かになっていく。そんなモデルをこの新宿からチャレンジしていくことで、23区からJリーグ、そして世界一という、本当に豊かさを作っていくクラブを、皆様と共につくっていきたいなと思っています」

 クリアソン新宿は社会人クラブの性質をほとんど失わないままカテゴリーを上げてきた稀有なクラブだ。ゆえに、既存のJクラブとはいくつか異なるところがある。そのひとつが、選手がビジネスパーソンでもあること。上に記した丸山代表の言葉にあるように、地域に根ざして働くことを求めている。今後、高卒の新人選手などが増えてきた場合にどうするのかを訊ねると、丸山代表は次のように答えた。

「現状、29名の選手がいるのですけれども、そのうちの22名がウチの社員選手という形で、基本的に株式会社クリアソンで働きながらサッカーをしてもらっています。残りのうちの4名が一般の企業で、残りの3名が学生ないしはフリーターをしながら、自分のやりたいことをやって、クリアソンと二足の草鞋を履くという風に、頑張ってもらっています。これからは、理想としては一般企業でバリバリ勤めながらクリアソンでもサッカーをやって、週末に国立で活躍出来るような選手がいたら、喜んで仲間にしていきたいなと思います。やっぱりカテゴリーが上がっていくとなかなかそういう選手も比率的には少なくなってきてしまうので、原則的には株式会社クリアソンとして雇用しながら、というパターンが増えるのかなと思っています」

スタジアムの応援をクラブ主導で

 もう一点、既存のJクラブと大きく異なるのはホームゲームの雰囲気だ。社会人の試合であれば応援がなくギャラリーが見守るだけという光景が当たり前。ただし、カテゴリーを上げていくうちに鳴り物入りの応援団がつき、既存のJクラブにあるような、ゴール裏の応援合戦にメインスタンドとバックスタンドが呼応する光景に変わっていく。クリアソン新宿はそうした雰囲気づくりにこだわりがあるようで、J3クラブライセンス申請と前後してクラブが応援の在り方を定めていく旨を発表した。

 社会人クラブの試合風景は、Jクラブというよりはウルトラス(サポーター集団)の存在しないイングランド・プレミアリーグのそれに近い。クリアソン新宿の場合はどういう雰囲気づくりをめざしているのだろうか。丸山代表の考えを紹介する。

「先日、我々がリリースを出させていただいた、スタジアムの応援をクラブ主導でやるというところに紐付いた質問なのかなと認識しますが、我々としては、結論から言うと来るお客さんによってスタジアムの雰囲気は変わるものだなと、ビジネス的には当たり前の話だと思うんですけど、感じています。ぼくらとしては、女性や小さい子どもや高齢者の方、初めて来た方々が安心安全で楽しめるようなスタジアムを絶対につくりたい。それを応援の雰囲気としてもつくって、その中で我々の選手が本気で、ひたむきに熱いサッカーをやって、そこで火が点いて、そこからスタンドの雰囲気がどうなっていくのか。そこは正直我々も想像出来ているかと言うと、出来ていない部分が大半です。ただ大事なのは、どういう雰囲気を押し付けでつくりたいということよりも、どういう人たちを顧客にして、どういう人たちに喜んでいただくスタジアムをつくるのかというものに対して、責任を持ってその価値を提供していくっていうことが我々のミッションだと思っているので。そこをクラブとして責任を持ってやりながら、一般の方に共感いただきながら、一緒に仲間になっていただける方には一緒に雰囲気づくりをしていただくというところでチャレンジしていきたいと思っています」

 たとえば社会人サッカーの多くは、家族や同僚などの身内が観戦に訪れる場合がほとんど。そこで危険を感じることはない。ただし昇格を繰り返してカテゴリーを上げていくにつれ観客は増え、危険性は増していく。「安心安全で楽しめるスタジアム」をつくる必要性はJリーグも繰り返し訴えているところだが、まずは危険性を出来るだけ低くするために一定の規定を設け、安全な状態を確保したうえで、ピッチ上で選手が表現し、それに観客が自然に呼応するという光景を思い描いているようだ。それは結果としてプレミアリーグのものに近くなるのかもしれないが、丸山代表が言うように、具体的には取り組んでみなければわからないことだろう。

 いずれにしても、もしクリアソン新宿がJリーグに加盟した場合には、これまでとは異なる選手の在り方や試合の光景が議論を呼ぶことになる。問題提起という意味でも、クリアソン新宿が今後どうなっていくかは気になるところだ。
(後藤勝)

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